昼前。 台所。 火はつけない。 蛇口だけ少し回す。 水の音が先に立つ。 まな板は出したまま。 包丁は触らない。 置かれた位置をずらさない。 指先が濡れる。 拭かずに、そのまま。 一瞬、肩に力が入る。 前からの反応が出る。 動く前に止まる。 それが自然だった気もする。 水音は続く。 距離も変えない。 台所は、この配置のまま残っている。